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一彦(かずひこ)、あたし今年の夏休みは海行きたい! 水着新しくしようかな~」  大学図書館で一緒に試験勉強した帰り道。美知(みち)が組んだ腕を揺さぶるようにしながら、弾んだ調子で切り出した。 「あー、悪いな。俺、今年は休み入ったらすぐ帰省するんだ。ちょっと家の方で用あってさ。こっち戻るの八月後半、たぶんお盆は過ぎると思う」 「ええ? それじゃ泳げないじゃない! お盆過ぎたらクラゲ出るんだよ⁉ それに半月も会えないなんて……」  あっさり却下する俺に、斜め下から()めつけるような視線を寄越しながら彼女があからさまな不満の声を上げる。  付き合って二年になる恋人。  多少身勝手なところはあるかもしれないが、俺とは真逆の自由で強気な面にも惹かれた。  あまりにもタイプが違い過ぎるからか、一緒に過ごしてて新鮮で楽しい相手だった。  小さな喧嘩くらいはしても、特に問題なく順調に行っていた。少なくとも俺はそう考えてたんだ。
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