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「すぐじゃないとダメなの? 海行ってから帰省するのは? 日帰りでいいんだし」
「もう決めたから。八月初めの試験最終日に帰る」
実家の方は何が何でも休みになったら速攻帰らないと、ってわけじゃなかった。だけど俺はいったん立てた計画を崩すのが嫌いなんだ。
「だったらせめて早めに教えてくれたらよかったのに。あたし、すごく楽しみにしてたのよ。大学最後の夏休みだから。今からじゃ試験前だからどこにも行けないわ」
「それはゴメン」
謝りはするものの、俺が考えを変える気がないのは美知にも伝わったらしい。するりと腕が離れて行く。
「そっか。……もういい」
「戻ったらどっか行こう。九月も休みだしさ。泳げなくてもいいじゃんか。海は見に行ってプール行けば」
「もういいったら!」
ぷい、と横を向いた彼女に、俺はそれ以上説得を重ねることもしなかった。
いつもの我が儘か。気分屋だからすぐに機嫌直すだろう。
──その程度にしか受け止めていなかった。
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