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【2】
「美知、どうしてる? 俺、最初の予定よりちょっと早めに寮帰るから海行こうか? 行きたがってただろ?」
八月半ばに俺が実家から掛けた電話に、彼女は冷たく答えた。
『別にもういいって言ったでしょ。海は澤木くんと行ったの。それに、今から行っても泳げないのに意味ある?』
「……え、え、何、──澤木?」
美知の言葉の意味がわからなかった。
いや、本当はわかっている。ただ、理解することを脳が拒否しただけだ。
澤木は英文学科での美知の同級生だ。
よく一緒に遊んでいたのは知っていた。ただ、彼との仲を気にしたことはなかったんだ。
美知は奔放な部分はあっても、そういう「裏切り」はしないと信じていた。そして今までは確実にそうだった、と思っている。
──今までは。いや、きっと今も。きっと……?
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