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月の光
序
太陽がその存在を大きく示す、夏が終わった。だんだんと日の暮れるのが早くなり、空気は秋へと移ろっていく。そして冬に近づくにつれ、夜はさらに長くなっていく。
長い夜が好きだ。天に架かる美しい月を、それだけ長く見ていることができる。月も、それだけ長く、地表のあらゆるものを見下ろしているのだろう───。
一
夜の闇に差す、眩しいほどの月光が、私を照らす。その光は、まるで貴方そのもののように、いつも私の寒々とした心に寄り添ってくれる。温もりをくれるのだ。
「貴方と一緒なら、寂しくなんかない」
私は月を見上げ、独り言のように呟く。
言葉は夜の闇に吸い込まれ、響くことなく消えていった。
今夜も、私は月の光を目指して歩いていく。貴方を見失わないように。
孤独、偏見、理不尽───。どんな事があっても、貴方さえ居れば、私はきっと乗り越えられる。
二
貴方が恋しい───そんな時は、私は決まって貴方の優しい声を思い出す。
「どんな時だって、ずっと二人、一緒だよ」
自然と溢れる涙は熱を持って温かく、そんな涙さえも、私は愛しいのだった。
今夜も、月の光を感じながら歩いていく。貴方がくれた道標を辿るように。そうすると、貴方が私の手を引いて、導いてくれているような気がするのだ。
三
あの日、眩しいほどの光をたたえた月が、夜空に美しく浮かんでいた。そんな月の明るい夜空の下で、私は貴方と巡り会えた。
だから私はその夜の空を、今までも、これからもずっと、大切にすると誓ったのだ。
今夜も、私は月の光を目指して歩いていく。貴方を見失わないように。
この先にどんな事があっても、貴方さえ居れば、きっと乗り越えられる。強くいられる──。そう信じて、私は歩いていく。月の光が照らす道を、どこまでも。
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