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再訪
月日が流れ叶人も優菜も大学生活を終わりをむかえる頃。
怪異館は四人から二人になったまま続けられていた。前の様にネットで世界や各地の怪異を調べ話すだけの事しかしていないが、何となく終わりにするのが嫌で続けていたのだ。
「なぁ優菜」
「ん?」
相変わらず派手に塗られたマニキュアを気にしながら優菜は返事をする。
「俺達の怪異館の活動ももう終わりに近づいてるだろ?」
「うん」
「最後に、もう一度朝比奈村に行ってみないか?」
「えっ?!朝比奈村に?!」
驚いた優菜は、咄嗟にテーブルに手をつき上にあったコーヒーをこぼしてしまった。
「あ~あ~」
叶人は近くにあったティッシュでこぼれたコーヒーを拭きながら
「俺、どうしても納得いかないんだよ。あの二人、まだ見つからないだろ?警察の捜査も終わっちまったって言うし」
「うん」
「あの時、忍ちゃんのお母さんに話を聞いた後すぐにでも朝比奈村に行こうと思ったんだ。でも行けなかった」
「・・私も、退院した後行かなくちゃいけないって思いつつも行けなかった」
「うん・・薄情かもしれないけど怖かったんだ。だって、山が崩れるなんて事あり得るか?普通じゃ考えられないだろ?」
叶人はコーヒーを拭いたティッシュをゴミ箱の方へ投げた。
「うん。普通じゃ考えられないけど、本当に崩れてたわ。誰かがネットに挙げた写真を見た」
「自分達の気持ちに区切りをつけるためって言えば聞こえはいいかも知れないけど・・大学ももう終わるし、やっぱり行った方がいいと思うんだ」
「・・そうね」
神妙な顔をした優菜は、少しだけ目を潤ませながら頷いた。
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