手紙

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どん・・どん・・ 地響きにも似た腹の底に響くような音が遠くの方から聞こえてきた。 「な?何だ?」 辺りを見回すが特に変わった所はない。 どん・・どん・・どん・どん・・どんどん 音が近づいている。 近くの木から鳥達が一斉に飛び立つ。 どんどん・・どん・・どんどんどん・・どん 不規則な音が次第に大きく聞こえ出し、地面までも揺らし始める。 「地震?!」 「な、なんけ・・」 どんどんという音と共に、地面が突きあげられるように揺れる。 「叶人!優菜を連れて早く山を降りろ!!」 「あ、ああ」 「山内も叶人を手伝ってやってくれ!!」 「は、はい!」 嫌な予感しかない俺は、取り敢えずここから三人を遠ざける事にした。その間もどんどんという音はさらに大きくなり、自分の身体が音と共に跳ね上がってしまう程になって来た。 「なんけ?なんけ?」 カネは音と揺れの正体が分からずパニックになっている。 俺は何とか体勢を保つと 「カネさん」 「あ?」 「あの地下にある祭壇を作ったのはカネさんの母親だな?そして、その祭壇に祀られていた首・・アレはお妙さんの母親の首」 「・・・・」 「あんたはお妙さんの呪いを鎮めるためとか言っていたが、お妙さんの呪いじゃない。あんたと、あんたの母親の呪いだよ」 「なに?お前頭は大丈夫け?どうしてワシと母親が呪わなきゃいけないけ?」 「カネさん達がどれだけ酷い事をされてきたのかは分からない。でも、人は生きていく間に色々な事がある。嫉妬、恨み、悲しみ、怒り、苦しみ、裏切りこのほかにも沢山あるかもしれない。でもその中で人は、笑い、幸せを見出していく。何処かで考えを変えていかなくちゃいけないんだ」 「ふん、何を偉そうに。そんな神様みたいなこと考えてる奴なんかいないけ。やられたらやり返す。痛みを与えられたら同じ痛みを味合わせる。これが本当の生き方け」 「・・・それで・・・あんたは本当に満足してるんだな?」 木々が倒されるようなバキバキという音が激しく聞こえてくる。 「満足?・・・ああ。満足け」 そう言ってカネがニヤリと笑った時だった。 今まで地面を揺らしドンドンと鳴り響いていた音がピタリと止まる。 「・・・・やんだけ」 「カネさん。あんたやあんたの母親は、お妙さんを想ってやった事で悪くないと思ってるかもしれないが・・ただの殺人鬼だよ。狂った殺人鬼だ」 「なにぃ?」 ギラギラと憎悪を込めた目を俺に向け顔をゆがめると 「小僧のくせに・・お前も生贄になるけ!あははははは!!」 と髪を振り乱し狂ったように笑いながら俺めがけて走って来る。 俺は逃げる事も慌てる事もなく、黙ってその場に立ち突進してくる狂い()の顔を見ていた。 皺の多いカネの手が俺の首を掴もうとした時、ドォォン!!!という今までにない音。まるで爆発でもしたかのような音がなり、いくつもの黒々としたものが飛び上がった。 咄嗟にその黒い物に視線を向ける。太陽の光を背中に浴びて飛び上がったソレは、ガラガラ!!ドォンドォン!!と鼓膜が破れそうなほどの大きな音をたて一斉にカネの上に落ちて来る。 その瞬間、俺は誰かに強く突き飛ばされ弾かれるようにして後ろに転げ倒れた。 「いっ!・・・!」 ガラガラ!!ドォン!バキッ!と何かが物凄い速さでカネの上に黒い物が集中して落ちている。 一体何が起きているのか分からない。砂埃が舞い物凄い地響きと共に、何かの破片が俺の方に飛んできて俺の頬を傷つけて行く。
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