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「あのさ、もうちょっと上手く切れないの?」
「はぁ?上手く切れてるだろ?」
叶人は、凸凹になったリンゴが乗る皿を優菜に見せるように高々と上げた。
「食べる所が無くなっちゃてるじゃん。下手糞」
「ちゃんとあるよ。ほら、食えよ」
「いらない。あんたの汚い手で触りまくったリンゴなんて」
と、優菜はそっぽを向く。
「コイツ・・じゃあ何か買って来るか?」
「いらない」
「いらないって、お前何も喰ってないんじゃないか?」
「・・・・・」
窓の方を向いたままの優菜は返事をしない。
病室の窓から見える景色はすっかり葉が落ちて冬らしくなった景色。晴れてはいるが、夜遅くから雪が降ると予報が出ていた。
「あの二人・・・」
「ん?」
「あの二人は、今頃どうしてるかな」
「・・・・・ん」
叶人は何も言えなかった。
優菜が救急車で運ばれ、病院に着くと直ぐに手術室に入った。漣と山内の事を聞いたのは優菜の手術が終わりひとまず落ち着いた時に、山内の母親が病院に来て知らせてくれたのだ。
双子山が崩れ落ち、驚いた朝比奈村の人達が山に向かった所大怪我をした正太郎さんがいたという。正太郎さんは「忍と漣君がまだ山に」とだけ言い残し病院に担ぎ込まれた。命には別状はないらしいが当分面会謝絶らしい。
すぐに警察に連絡し二人の捜索が始まったが、今だ二人は見つかっていない。
「もう三週間か・・・」
「うん・・・」
それ以上喋る事なく、二人は窓の外を見続けていた。
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