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また
「瑞希!」
彼女がこっちを見た。
泣いた跡。
やっぱり、な。
「隼人、ごめん。バイト、終わったの?」
「うん。今日、早上がりだから。」
嘘つけ。瑞希からのLINE見て、30分早くあがらせてもらったくせに。
「行こう。瑞希、飯は?」
「ううん。いらない。」
まぁた、しっかりめかし込んで。今回の相手は社会人とか言ってたな。どーせ、高級なレストランかで奢ってもらったあと、振られたんだろ。
「ねぇ、どこ行くの?」
「お前んち。送ってくよ。」
反対から来る人をよけながら、しばらく歩いた。
「隼人、なんか、しゃべってよ」
「俺、バイトで疲れてんの。お前の方が話したいこと、あんじゃねーの?」
「うん…また、振られちゃった。」
「……懲りないねぇ…」
振られたことくらい、見りゃ分かるよ。
しばらくすると、後ろから、すすり泣く音が聞こえてきた。
俺は、少し、歩くスピードを落とした。
駅前の横断歩道は、赤に変わったばかりで、待つはめになった。
斜め後ろに立っている瑞希は、肩を震わせている。10月の夜の空気は冷たさがあった。俺は自分のジャケットを脱いで、彼女にかけた。
「ありがと…」
消え入りそうな声で、彼女が言った。
あ、青に変わる。
ここの信号、待ち時間長いくせに、すぐ点滅すんだよな。
さぁ、
みんながそそくさと渡りだしたのに、瑞希は突っ立ったままだ。
「はぁ…」
俺は、自分のカバンを肩にかけると、瑞希の小さなバッグをさっと取って、空いた瑞希の手をとった。
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