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はじまり
たしかに、榊の言ってることは正当だ。
でも、俺にとっては、瑞希と過ごす何気ない時間も、気軽に出掛けられる間柄なのも、すごくありがたいんだよ。
それがなくなるのは、嫌だ…
5年前、高校2年のときに、瑞希は三重県から引っ越してきた。父親の転勤に、家族みんなでやってきた。
当時、俺はくじで負けて、クラス委員をさせられてた。転校してきたその日、クラス代表で、瑞希に校内を案内した。
きっと、そのときからだ。
俺の片想いが始まったのは。
初めは、可愛い子だな、くらいだった。
けど、初日の案内を機に、瑞希は俺によく話しかけてくるようになり、いつのまにか、唯一無二の存在になっていた。
初めてだった。家族以外で、自分の損得考えずに、なにかしてやりたい、と自然と体が動くのは。
転校してきて、すぐ、修学旅行というビックイベントがあった。
内心、心配だったけれど、彼女の飾らない性格と屈託のない笑顔は、周りを巻き込んで、修学旅行が終わる頃には、すっかり、クラスに溶け込んでいた。
それでも、なにか困ったことがあると、すぐに俺に相談してきた。そのうち、恋愛相談までしてくるようになった。
瑞希に、好きな人の話をされる度、チクチク胸が痛んだ。
瑞希は成績はよかったけれど、恋愛に関してさっぱりで、振られると、すぐに俺に泣きついてきた。
1人目は、1コ上の先輩。
俺は同じサッカー部だったから、先輩との間を取り持った。
そのときはまだ、この気持ちを自覚していなかったから、どうってことなかった。
でも…
1ヶ月くらい過ぎて、瑞希が振られたときは、自分のことのように悔しかった。
この子を泣かせるなんて、例え先輩でも許せないと思った。
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