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イヴの夜 1
事態が急変したのは、その年のクリスマスイヴの夜だった。
「おぉ、今、終わったよ。あぁ、めんどせーな。分かったよ。んじゃあな。」
俺がバイトを終わる時間を見計らって、榊から電話がかかってきた。
『どうせ、一人だろ?ひとりもん集まって、楽しくやろーぜ』
って、まぁ、そうなんだけどさ。瑞希は、例の先輩のところだし。イヴがどうとか、どーでもいいけど、部屋に一人よりはマシか…。
頼まれた追加の酒やつまみを買って、もう少しで榊んちってときだった。
スマホが、鳴った。
"なんだよ。もう追加はきかないからな!"
そう思って、ポッケから、スマホを出した。
画面を見て、慌てた。
今夜は、かかってくるはずのない瑞希からだったから。
「もしもし?」
「….隼人…」
「おい、どうしたんだよ。」
「…….」
「俺、今から榊んちなんだけど。」
「…隼人…わたし…も…やだ……」
泣いてる?
しかも、これ、相当ダメなやつだ。
「おい!お前、いま、どこいんの?」
「….分かんない…」
俺は瑞希にそう聴きながら、榊んちに向かって走りだしていた。
「ハァ、ハァ…分かんないって、お前、なんか覚えてないの?…ハァ、そっから、見えるもんとか…ハァ」
「…きれいな三日月…」
「…ハァ、ちげーよ!場所が分かるような、目印になるもん!…ハァ」
「ん~…先輩んちの近くの公園かな……そういえば、奈々ちゃんの誕プレ買ったお店の前、歩いた….」
"あぁ、そーいや、こないだ、買い物付き合わされたな"
「分かった!…ハァ…そっから、動くなよ…ハァ」
俺は電話を切って、榊んちのチャイムを連打した。
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