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イヴの夜 2
「うぉーい。」
呑気な返事で、榊がでてきた。
「おー、隼人!らっしゃーい」
部屋の奥からは、すでにデキあがってるヤツの声がした。
ハァハァハァ…
俺の様子を見て、榊は真面目な顔つきになった。
「これ、頼まれたもん…ハァ…」
「あ、ありがとう。隼人、まさか…」
榊は、何かしら感じ取ったようだった。
「…うん、悪りぃ…ハァ、せっかくだけど。ハァ…」
「いいよ、早く行ってやれよ!そうだ、お前、これ、チャリ、良かったら使え!」
榊は、おもむろに、下駄箱にかけてあったチャリの鍵を差し出した。
「ハァ…助かる…」
俺は走ってきた道を、自転車で引き返した。
道まで出てきた榊が叫んだ。
「お前、絶対、相手の男、殴んじゃねーぞ!」
12月の空気は冷たくて、息をすると、喉に突き刺さる。
"奈々ちゃんの誕プレ買った店"
そう言ってたな…
ひとまず、その店を目指して、俺は自転車をとばした。
大通りはイルミネーションがされて明るく、軽快な音楽が流れている。
でも、今はそんなことは、どうでもよくて。
「…瑞希…」
店に着いた。
俺は自転車を降りて、周辺に公園がないか探して歩きだした。
"いた"
店から2つ目の角を曲がって、少し通りから外れた所に、小さな公園があった。
公園の街灯の下のベンチで、瑞希は脚を抱えて、顔をうずめていた。
公園の入り口に、榊の自転車を停め、瑞希のところまで歩いた。
「瑞希?」
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