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下校は一緒にする約束をして、三日が経った。ぎこちなく繋いだ手は、突き放すような冷たさを感じる。
たぶん、この人はわたしのことを憎んでいる。入学した当初から、そんな視線を浴びていたもの。
「千冬先輩。ほんとにわたしでよかったんですか? 逃げ出すなら今ですよ?」
冗談まじりで笑ったら、「夏乃ちゃんがいいんだ」と優しい眼差しが返ってくる。
これは偽りの顔なんだろう。それでも、彼を手に入れた喜びの方が深い。
絡め合う指先に力を入れて、真っ黒でガラス玉みたいな瞳を見上げる。
「わたし、すごく重いですよ? 覚悟してくださいね」
「それはお互いさまだよ」
クスッと笑みをこぼす彼に、そっと身を寄せた。
どこからか、金木犀の香りがして鼻をくすぐる。秋の気配を感じながら、うっとりと瞼を閉じた。
親愛なるあなたへ。
今は復讐の相手でもいい。
じっくり時間をかけて、あなたから心を奪ってみせるから。
だからもう少し、不幸な先輩でいてね。
わたしの愛で埋め尽くされて、わたしなしでは生きられないようにしてあげる。
fin.
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