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<ネオメロドラマティック-2007.AUTUMN>
金木犀が香りはじめた。視覚の桜、嗅覚の金木犀、どちらとも結構好きだ。日中の暑さが大分マシになって、チャリであえ家に向かう途中、耳を貫く言葉が聞こえた。
「さぁ、忍者たち!炎の術だよ!」
テンション高めの声に、キーボードでそれっぽい音楽が流れる。音量が段々上がってきて、音の主である公立幼稚園の所でチャリを止める。フェンスと観客越しに、赤と橙のポンポンを持った子ども達が敵役の大人達を取り囲みくるくると走っている姿が見える。
悪役が捨て台詞を吐いて倒れると、「やったー!」「イェーイ!」と口々に歓喜の声を上げ飛び跳ねる子ども達。
忍者役以外の子ども達も出てきて、忍者が修行して怖い鬼から里を守ったよやったー、というあらすじのような作曲した短い歌を全員で歌っていた。
子ども達が生き生きと歌う姿に鳥肌が立った。
大人に合わせるんじゃなくて、子どもが興味を持つことに合わせる。
シンプルだけど、うちの園では出来ないことを、さも当然のようにやってのけている。
そう言えば、真由の公立保育所の運動会の歌でもこんな感じのがあったかもしれん。
公立だからここで働くのは皆公務員。就職活動の時は、公務員に良いイメージが無くて選択肢に無かったが、ここでなら楽しく保育できるかもしれない。
チャリを進めて正門で園名を確認しながら、頭の中では、『行こうか 逃げようか』のワードが渦巻いていた。
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