<BE TOGETHER-2006.SPRING>

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何で連絡先聞いておかなかったんだろう。こんなに頻繁に思い出すようになるってわかってたら、絶対に聞いておいたのに。 まあ、進学先が一緒だから来年は会える。文化祭には遊びに来てくれそうだし。つうか自分が受かること考えようぜ。 と思っても、雪がちらつく卒業式後、じゃあねっ、と風のように消えていく姿が夏の今でも鮮明に残っている。 あの日から残像が消えん。何度も何度も思い出しちまう。あえ先輩の後ろ姿に、行かないで、と声をかけたくなっちまう。腕を引っ張りたくなっちまう。違うな、組み伏せて抱き締めてめちゃくちゃにしてやりたくなる。 ♪あーなたに 会えたそれだけで良かった 愛されたいと願ってしまった CMのフレーズを聞くと、会えただけで良かったなんてウソだという気持ちと、愛してほしい気持ちが絡まり渦を作り胸を落ち着かなくさせる。 恋、なんかな。ただでさえ受験でピリピリしてんのに落ち着かない。 遠い。 ・ ・ ・ 高校最後の文化祭を歌い終わり、ジュースを買いに行くという名目であえ先輩を探していた道中 「よかったよー」と声をかけてくれたのは、あえ先輩。茶色に染めてパーマかけて、キャミソールにタイトなスカート、高さのある靴を履いて、すっかり大学生が板についていた。 「あざーっす」 鼓動がドクドク、ドラムのように鳴り始めた。人前で歌っている時より緊張してる。ヤバイヤバイ、祭りが始まっている。気取られないように素気なく、大学どうすか、と聞いてみる。 「大学楽しいよー。彼氏作りたいからテニスサークルとか入ってみたけど……全然だわ。大学生になるだけで彼氏出来たら、皆苦労しないよねー」 誰か格好良い人いないー?と模擬店をキョロキョロ見渡す。言おうかな言おうかな言おうかな言おうかな。 いかがですかーの呼び込みの声、落とし物のアナウンス、迷子のママを求める叫び、おいしいねーのお客さんの会話、それよりもオレの声は小さかった。 「オレ……彼氏になりたいな」 「いーよ?」 「いーの??」 一瞬目を丸くして、とぼけた風に返事されたから不安になった。 「その……本気なんですけど……ネタとかじゃなくて」 「いーよ、付き合お。はい、手ェつなごっ」 ほいっとカゴバックを持っていない方の手を差し出す。 「いやいや、即断したらダメっしょ!」 「なんで?」 「こういうのってじっくり考えないと!」 「とりあえずだよ。とりあえず付き合ってみなきゃわかんないじゃん?断る要因無いし」 「お試しってことっすか?」 「それがいいなら、それでもー」 「……やだ。ちゃんと付き合いたいっす」 「なら、それで」 はいっと再び手を出されるが、恥ずかしいからここでは無理っす、と伝えると、そっか、と手を引っ込めてくれた。 初めての両思い?かはわからんが、初告白、初付き合いは間違いない。 また連絡するね、と彼女は帰ってった。 欲していたもの以上のものを得られたことに、足が地につかなかった。
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