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<ハネウマライダー2007.SUMMER>
かじ先生は形は否定しようとせず聞いてくれる。
「今回のねらいは何やったん?」
給食を配膳し終わり、落ち着いた頃に話しかけてきた。
製作は年間計画を立てて実行してきた。
4月活動★ちょうちょの模様を絵の具で描く
絵の具で描くことを楽しんでいた。あおい、手に絵の具がつくのが嫌いで初日は様子見だったが、翌日誘いかけるとする。絵の具自体が楽しくて最終的に色が混じってしまい模様にならなかったのが反省。
5月活動★マーカーでこいのぼりの模様を描く
前回自由に描いていたので、今回はマーカーでのびのびと描けるようにした。各々集中して描いていたが、絵の具ほどの熱中ぶりは無かった。
6月活動★マーカーをにじみ絵にして紫陽花を描く
マーカーだけでは物足りなさそうだったので、にじみ絵にしてみた。
色の種類を赤、青、紫、ピンクに絞ったことで、淡い紫陽花の雰囲気が出た。
7月活動★三角繋ぎを繋げる。(折り紙を三角に切っておく)
製作が好きでずっとしていたい子どもが多いので、大量に用意したことで心ゆくまで繋げられたので良かった。飾りを都度、部屋に飾っていくことで、子ども達が見返して満足感を得られて良かった。あおい、のりが嫌で触ろうとしないが、画用紙の切れ端でとってつけていいよ、とやり方を見せるとやっていた。
8月活動★ゴーヤでスタンプをする
食育の一環で育てたゴーヤのうち、痛んだものを輪切りにしてスタンプした。
「スタンプを楽しむ……っすかね。ただ感触遊び苦手な翡翠くんがゴーヤを握って絵の具を混ぜるのを楽しんでたから、ゴーヤと絵の具の感触楽しんでもいいかな、と」
「なるほどね。」
「みっつ、今日遅出やろ?さりげなくその経緯伝えたって」
「はぁ……」
「うちの考えすぎかもしれへんけど、翡翠くんとこのお母さん、割と周りの目を気にするタイプやから、他の子と違うと、出来てないんじゃないかって思うからさ。3月生まれやし、1人目やし」
そうか、見る人にとっては他と比べてみるし、結果しか見ないもんな。
「ごーや みつけたよ!」
給食のかき揚げをバラバラにしている茜ちゃんがクラスで育てたゴーヤを見つけた。
「あった?どんな味する?」
「んー、やさい!」
かじ先生と思わず顔を見合わせて笑う。まだまだ言う通りに動かないことが多い3才児だが、可愛い姿もまた3才児だ。
余ったおかわりを渡しに4才の保育室に行くと、隣の5才の部屋からアゲハ蝶のイントロが聞こえてきた。仕事中なのに反射的にあえのことを思い出してしまう。運動会の鼓笛隊でやる曲かな。
「アゲハ蝶やるんスかー?」
ふと、5才室を覗き込みに行くとCDデッキを操作しているふじ先生がいた。
「うん、やるんだったら自分のテンションが上がる曲にしようと思って。ハネウマライダーは去年やっちゃったし、アップテンポで速すぎないで知名度ある曲って言ったらこれかな、って。ミュージック・アワーも迷ったけどね」
「へー!」
去年は同じクラスでハネウマライダーでお遊戯をした。サビでライブのように腕を振り回しながらぴょんぴょん飛ぶ姿が可愛いと保護者に好評だった。当時のCMソングだったから子ども達の耳なじみも良かった。
ポカリスエットを買ってたら、要らないなら付いているポルノのライブ応募券頂戴、ってふじ先生に言われて飲む度あげてたのを思い出した。結局当たんなかったみてぇだけど。
そんな話をしながらも、お喋りが盛り上がりすぎるグループに、静かに食べようね、と時折目線と言葉をかけるふじ先生。この5才児は去年隣クラスだったが、わちゃわちゃしていて落ち着きがなくて、喧嘩っ早い子もいたし、怒鳴り声がよく鳴り響き、3才さんからやり直してきて!、とうちの3才クラスの入り口に放り込まれて泣いていることが多かった。正直、オレはこのクラスじゃなくて良かったと思う。
去年担任した3歳クラスは割と落ち着いているクラスだった。今年の3才児は集団行動など集まりは悪いが、本当に面白いことだったら全員集まってくる。楽しいこと、興味があることは、「集まって」なんて声かけがなくても自然と集まるのだなと思うと、保育の質って大事だなと思っている。どのクラス持とうが給料は変わらないんだったら楽な方がいいけど、大変だからこそわかることもあるんだな。
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