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4.ヴィンテージ(2023.MARCH)
修了式翌朝、ここも咲いてるな、と毎日の河川敷ランニングコースを通りながら思う。例年より早咲という予報通りに咲いていて、咲くのもすげぇし、予想するやつもすげぇと思う。
娘に、生まれ変わったら何になりたいと聞かれて、木になりたい、と言ったら「きぃ〜〜〜〜?」と大笑いされた。
引かれても驚かれても、誰に何言われようがされようが関係なく自分のペースで花咲かすような木にオレはなりたい。
『僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう』この木は生えているし、木が育つための雨風や太陽の昇降システムは確立されている。自然にはかなわねえや。
「あいか ランドセルは このかざりがいいとおもうんだけど パパは どうおもう?」なんて自分の中で絶対これと決めてるくせに義務的に聞いてくる娘だって、凛花の腹ん中で勝手に育って、人間の形して出て来た。自分の力の届かんところで全ては動いてる。
走っていれば、忘れられる。目の前の現実に集中できる。無力な自分の中にひと匙の頑張る自分を見つけることができる。出来ない事を受け入れられたら太陽の輝きに素直に感謝できる。
正規の公務員に小学校教諭として受かり、結婚し子供を女男2人設けて、なんとか人並みの幸せ枠に滑り込めたことで、周囲からうるさく言われることも減った。
今年度は比較的問題のない学年で授業も進めやすく保護者対応も楽だった。4月から異動になる。未知の現場に繰り出す怖さ、わくわく、期待、面倒臭さ、全部ひっくるめて背負ってやっていく。
もうすぐ”先生”を選んだ季節から24年。辞めたい時もなくはないけど、それより人並みの幸せってやつを大事にしてしまう自分がいる。
無くしたくねぇもん守るしか出来ん消去法的な生き方しながら、明日も明後日も桜の花びらが吹雪くのを見ながら走るんだろう。
おわり
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