2話・痩せたい片想いにゃ

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…と思ったのだが渡辺はそれらを拾うと手で払って「もう〜、勿体ない!食べないなら私が食べるから良いわよ」と食べ始めた。いや食べるんかい!?(きたね)っ! 「ほれれね、わらひれほくらめらるらんらけど…」 何言ってるか分からないにゃ。 「……(ごくん。)…えっとね、それでね私水泳部やめちゃったんだよね」 知ってるってばだにゃ。 「……でも本当はまだ続けていたかった」 うん。…何となくそれは気付いてたにゃ。だってお前水泳部の話ししてると凄く楽しそうにゃもん。優人と服巻が大好きな車の話ししてる時と同じ顔してたもん。それに続けたかったのはきっとそれだけじゃないにゃ。 「菊池先輩に泳ぎ方教えてもらうの凄く嬉しかったんだ。泳ぐ時もっとこうした方良いよとかアドバイスくれたりして…菊池先輩とのその時間が本当に大好きだった。泳ぐのがもっと大好きになれたきっかけをくれたのも菊池先輩だったから…先輩が学校卒業するまでまだ一緒に泳いでいたかったんだけどなぁ…。…あはは、自分でその時間無くしちゃった。アホだね私、がっかりしてんの」 シーチキンとかと一緒に買っていたらしい焼きたらこのおにぎりを食べながら渡辺が情けなさそうに小さく笑った。 「どうせこんな終わり方になるならもっと早く気持ちを伝えておけば良かった…」 ぐしゃぐしゃに丸まって地面に落ちていた白い紙を前足を使って開くと“菊池先輩へ”と書かれた文字が見えた。ラブレターって言うやつにゃ。 そうか、渡辺が下駄箱でうろちょろしてたのはこいつを菊池に渡すかどうするか悩んでいたからだったのにゃ。…さっき渡せば良かったのに、お馬鹿な奴にゃん。 おにぎりを齧りながらぐずぐず泣いてる渡辺を見上げて小さくため息がこぼれた。 -人間はめんどくさい生き物。 つくづくそう思う。僕達(ぼくら)動物なんて好きになったらすぐアタックしてライバルが現れたら戦って女の子は勝った方と付き合う。強い者が選ばれるそんな単純な生き方しかしないのに人間は動物と違っていつも何かしら難しい事を考えては悩んでうじうじしてて、必ず全員がそうだってわけじゃないけど側で見てていつも思う、なんて生きにくそうな生き物なんだって。
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