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「お前さ、何泣いてんの? バカじゃねーの?」
瑠偉はいつものようにぶっきらぼうで、愛想のない声を出す。表情一つ変えないから、怒ってるようにも見える。
でも、そのあとは必ず頭を撫でてくれて、小さな指で瞼を拭ってくれるのだ。そうするとなぜか、涙が止まっていく。
「いつまでも泣いてんじゃねーよ、バカ」
瑠偉との思い出で一番古い記憶がそれ。小学校へ上がる前、公園で泣いていた私に言った。
それからも、同じようなことが何度もあった。泣いている私を見つけると、スッと近寄ってきて冷たい言葉を投げつける。
そして決まって、「泣いてんじゃねーよ、バカ」と言いながら涙を拭ってくれる。
彼は私にとって救世主みたいな存在なのかもしれない。普段は愛想のない悪ガキで、笑ったところなんて一度も見たことがないような少年。幼なじみじゃなかったら絶対に仲良くなんてならなかったと思う。
口が悪くて、目つきも悪い。
学校でも彼は同じように不貞腐れたみたいに毎日を過ごしていて、誰も近づけさせないオーラを出している。陰で如来、と呼ばれていることを本人は知っているのか知らないのか。
瑠偉には二歳下の弟がいて、私も何度も一緒に遊んだことがある。瑠儀くんという名前で、瑠偉とは正反対のようにいつも明るくて、常に笑っているような子だが、軽度の障害がある。
急に叫んだり、喚いたり、走り回ったりするのを除けば本当にいい子。私も大好きな存在だ。お兄ちゃんのことが好きで、ずっと後をついて行く。
瑠偉は笑うことはないのだけれど、ちゃんと弟の面倒を見てあげる立派な兄だ。
「うちには父親がいねえからな、俺が父親代わりだ」
一度だけそんなことを言われた記憶がある。瑠儀くんが生まれてすぐ、父親は家族を捨てて家を出たそうだ。詳しくは聞けなかったけど、それから家族三人で暮らしているのだという。
瑠偉のお母さんもとても明るい人で、私と会うと元気に声をかけてくれる。
「雫ちゃん、どうした。元気ないねぇ、元気出しなー。そんな顔してたらね、瑠偉みたいになっちゃうよ、なんつって」
なんつって、の顔が面白くてつい笑ってしまう。本当に元気をくれる存在。私は瑠偉もその家族も大好きだ。
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