涙泥棒

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「雫ちゃん、瑠偉と仲良くしてくれて本当にありがとうね。あの子、友だちいないでしょ? いっつも無愛想でさ、ニコッと笑うことなんてないのよね」 「家でもあんな感じなんですか?」 「うん、そう。瑠儀といるときは少しはマシだけど、それでも全然笑わない。だからさ、雫ちゃんと喧嘩しながらも普通に話してる姿見るとなんか不思議な感じがしてね。本当にありがとう」  自分でもよくわからない感謝をされて、私は戸惑ってしまう。 「……私は何も」 「居てくれるだけでいいから。あの子の近くに、居てくれればそれでいい。本当に感謝してる」 「本当に、私は何もしてないんです。むしろ、瑠偉が私にとっては大事な存在っていうか、涙泥棒だから」 「涙泥棒?」    私は、しまった、という顔をした。でも瑠偉ママには喋ってもいいかと思い、おばあちゃんに言われたことを話した。 「へー、涙泥棒か。あの子がねー。あ、でも確かにそうなのかな。瑠儀が泣いてるとき、私じゃ泣き止まないけど、瑠偉が慰めるとすぐ泣き止むのよ。なーんだ、そういうことかー。涙泥棒かー、だけどさ、泥棒だったらもっと盗んでほしいものいっぱいあるんだけどな。皺とかさ、ほうれい線とか、お肌のシミとか。なんつって」  おばさんはいつものように、変顔で私を笑わせた。本当にいい家族。  どれだけ苦しくても、いつも笑顔でいられる、そんな家族だ。私もいつか、こういう家庭を築きたい、そう思った。
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