嘘占いのマリア

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 教会の扉は鍵がかかっておらず、古ぼけた重厚な扉に真新しい貼り紙で「welcome」と書いてあるのを見て、中へ入ってみた。  外から見て明かりが灯っていた一角は、どうやら懺悔の部屋のようだった。  何か悩みや人に言えない秘密を抱えた信者が、こっそり訪れて神の前で告白するあの薄暗い場所…映画などでお馴染みの場所だが、現実に見るのは初めてだった。  近付いていくと、不自然にしゃがれた女の声が出迎えたのだった。  「うら…ない?」  「そうですじゃ」  「…」  「まあ、座りなさい」  映画で見た懺悔の部屋は、互いの顔が見えぬように仕切られた部屋に、懺悔する信者と神父がそれぞれ入っていた気がするのだが、その部屋は仕切りが取り払われ、顔が見える状態で対面する形になっていた。  そこに座っているしゃがれ声の主は、20代前半ぐらいにしか見えぬ若いシスターだった。  「おぬし…」  何か言いかけてシスターが咳き込む。  「普通で…いいですよ」  シスターが無理にしゃがれ声でしゃべっているのは明らかだった。  来馬崎が声をかけると、シスターはパッと明るい表情になって話し出した。
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