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「よかったあ、雰囲気出してしゃべろうとすると苦しくて苦しくて」
普通に話すシスターの声は、耳に心地よく、ちょっと艶のある美しい声だった。
薄暗い明りに目が慣れて、あらためて向きあってよく見ると、声のイメージに合った美しいシスターであるらしいことがわかった。
らしいというのは、怪しげな雰囲気を出すために濃く引いたアイシャドウや真っ赤な口紅、いかにもという額の血糊、全くもって稚拙なメイクに覆われていたからだ。
「これは…ハロウィーンのイベントか何かですか?」
「ちがいます、マリアの占いの館です」
「シスターが…占いをされるんですか?」
「はい、黒魔術占いを得意としています」
来馬崎は吹き出しそうになったが、何とか堪えた。
「黒魔術?」
「はい、意外性があっていいじゃないですか、教会で黒魔術」
「いいんですか?」
「いいんです、どうせもう、廃業した教会ですから…あっ、でもわたしは本物のシスターですよ!」
彼女は…シスター・マリアは、元々この教会で働くシスターだったらしい。
互いに簡単に自己紹介をしたが、マリアが本名のようだ。
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