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「来馬崎さんっ!」
見るとマリアは可愛らしいふくれっ面をしている。
どうやら怒っているらしい。
「ここは人生相談じゃなくて占いの館ですっ!来馬崎さん全部しゃべっちゃったじゃないですか!」
「あ!」
なぜだろう、初対面のマリアに、つい自分の身の上をぺらぺらと話してしまった。
「でも…お仕事、きっとうまくいきますよ」
「それは占いですか?」
「勘です…わたしの勘」
その週末、来馬崎はふと気になって、昼間の教会を訪ねてみた。
後から考えてみれば、あれは凝ったハロウィーンの仮装だったのかもしれない。
もっと酷ければ、来馬崎の病んだ心が見せた幻覚かもしれない。
そこは意外に手入れのされている墓地を通り抜け、教会の扉の前に立つ。
今日は「welcome」の貼り紙は無かった。
「やっぱり…ただの廃教会なのか…」
しばらく茫然と立ち尽くす。
この場所に、何を期待してやってきたのだろう。
僅かばかりの占い料を払い、妙なシスターと会話をした。
たったそれだけの経験に、再度足を運ばせる何があったというのだ。
「来馬崎さん?」
心地よい女の声に振り向くと、作業着姿のマリアが大根を持って立っていた。
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