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見ると教会の庭で家庭菜園をやっているようだ。
怪しげなメイクをしていないすっぴんのマリアは、思った通り清楚な美しい顔をしていた。
「よく憶えてましたね、私の名前なんか」
「はい、お客さん、滅多に来ませんから」
だからこうして、自給自足の為に野菜を育てているらしい。
「お墓は、ずいぶんきれいにされているんですね」
「ええ…教会の廃業なんて、死者には関わりの無いことですから」
「墓地の管理料で収入を?」
マリアは首を振った。
「でも、こんな教会にも寄付をくださる方々がいます…」
「そうですか」
それもこの、マリアの人徳なのだろうかと思う。
「今日は、どうしたんですか?」
訪問の理由を問われて、言葉に詰まる。
特に理由など無い…無いが、変に誤魔化せばまるで下心があってマリアに会いに来たように感じてしまうかもしれない。
彼女くらい美しければ、自分の魅力を自覚していないはずがない。
「いえ、大した理由は無いんです…先日占ってもらったのが…何だか現実のことでは無かったように思えて、確かめに来たんです」
「そう…」
逆光に陰るマリアの顔が、ちょっと寂し気な表情に見えた。
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