嘘占いのマリア

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 来馬崎は黙って一礼すると墓地を通り抜け、教会を去った。  「おじさん、よくこの教会に来るね」  教会の前の通りで唐突に、知らない少年が話しかけてきた。  前回来馬崎がここを訪れた時も見ていたのだろうか。  それにしても、馴れ馴れしいと思い訝し気な表情になって黙って去る。  「なんだよ、今日は愛想悪いなあ…」  少年の言葉が少し気になったが、それ以上に今は、マリアによって胸に刺し込まれた棘の様な気持ちが来馬崎をざわつかせていた。  マリアはもう来るなと言ったが、この棘はマリアにしか取り除けないような気がしていた。  悶々と、仕事とアパートを行き来する毎日。  一人になって目を閉じると、浮かぶのはマリアの顔。  マリアは確かに美しく魅力的だが、不思議なくらいそれは、男としての感情を伴わなかった。  それなのに、もう一度会いたい気持ちが日に日に大きくなっていく。  来馬崎は決意した。  ストーカーと思われても構わない。  営業時間に再度訪れよう。  それでも拒絶されるなら、今度こそ諦めよう。  始めたばかりの仕事も辞めて、この街から去ろう。  そしてまた、仕事帰りの月夜の晩に、来馬崎は教会の前に立っていた。
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