嘘占いのマリア

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 b828948d-6d57-46c0-b1e8-26fe2c2e8c84  ハロウィーンの夜。  男は仕事帰りに街外れの教会の前を歩いていた。  満月にシルエットを浮かべるその教会は、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。  併設された墓地と、庭の枯れ木、月光が透けるステンドグラスは煤けて、屋根のてっぺんにある十字架は傾いているように見える。  何の変哲もないこの街の一角に、こんな場所があったのかと思う。  仮装してはしゃぐ子どもたちも、そのいかにもという雰囲気の漂う場所に近寄ろうとはしない。  すれ違うカボチャ頭の少年は、不思議そうに男を見ていた。  魔物が巣食う廃墟のように見えるその教会の窓の一つに、薄く明かりが灯るのに気付いて男は近寄って行った。  後で思えば、何故、行ってみようと思ったのかはよくわからない。  地元の人間には忘れられた風景の一部となっていた、その教会が目に留まったのは、その男、来馬崎(くるまざき)笙一がこの街に来てまだ三日目だったからだろうか。  それとも、来馬崎はそもそも、教会に引き寄せられてこの街に来たのだろうか。  「いらっしゃい…マリアの占いの館へようこそ…」
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