十月十五日

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 何のために? 見つからないようにするためだ。何から? 誰から? ドクン、ドクン、と心臓が高鳴る。この鼓動は見つかってはいけないという緊張感だ。見つからないように小声で会話した。誰かが言ったあの言葉。 「十月、二十一日……」  口に出して呟いた。ふとパソコンに表示されたスケジュール表を見れば今日は十月十五日。あと六日で二十一日だ。今までこの日にちを気にした事はない。いや、気にしないようにしていた。何故ならその日は事件が起きた日だからだ。  先ほどの声、本当に無意識に突然思い出したのでもう声の特徴を忘れてしまいそうだが子供の声だ。考えられるのはあの当時の友達しかいない。連続児童殺人事件。この事件を琴音はなるべく考えないようにして生きてきた。昔は気にしすぎて鬱のような症状が出たが、店のママから「嫌な事は何とかしようとせず遠ざけて逃げるのが一番。逃げが臆病、挑めなんて、イージーゲームしか制した事のない奴らの暴言よ」と言われ少し気が楽になった。それ以来この言葉を大切にし、気にしそうになった時は知らない、関係ないと言い聞かせてきた。  何故生きていた自分が死ねば良かったなどと罵られなければいけないのか。覚えていないものは覚えていないのだから、何を言われても自分にはどうしようもない。考えるだけでストレスだ。最近忙しくてずっと気にしないで過ごしていたというのに台無しだ。琴音は小さく舌打ちをした。  軽くストレッチをすると身支度を整えて外に出る。苛々したら外に出るようにしている。体を動かした方が気分が晴れるからというのもあるが、部屋に閉じこもっているのは昔から苦手だ。閉所恐怖症というわけでもないのだが、小さな空間にじっとしていると落ち着かなくなってくる。  そういえば、あの日。なんとなくだが、かくれんぼをしていた気がする。神社があり、公園があり、あちこちに散らばった状態で見つかった友人達。たぶんそこに隠れていたのだ。自分が発見された場所は境内の中にある小さな社のような物の中だったと聞いた。社は本当に小さく大人が一人入れるかどうかとう大きさだ。当時小学生だった琴音は余裕で入れただろうが狭い事には変わりない。たぶんその影響だ、暗く狭い場所が好きではないのは。  何故そんなところに入ったのか自分でもわからない。幼かったとはいえ入ってはいけない場所だということくらいはわかる年齢だったはずだ。そこまで考えて小さく頭を振る。 「知らない。考えても無駄」  わざと声に出して深呼吸をする。考えるな、気にするな。心の中で数回呟いた。自分の心を、精神状態を安定させて守るには関わらないのが一番だ。
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