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【 プロローグ 】
私たちには、譲れないものがある。
それを奪うことは、何人たりとも決して許されない。
2022年6月10日、金曜日。深夜0時。
薄暗い松林の中を時速15キロほどの速度で、6つの輪が一列になり風を切る。
そこを通り抜けると、電車も既に通らなくなった、この静まり返った住宅街にある大きな建物へと辿り着く。
時折、パチパチとするぼんやりとした明かりに照らされた3つの長い影が、先ほどまでの動きを止めた。
見上げた先にうっすらと姿を現した巨大なもの。
6月の少し湿った風が吹く暗闇の中、誰かの「コクリ」と喉を鳴らす音が聞こえた。
「行くよ」
その合図で、3人は準備しておいたアルミ製のはしごをその塀に凭れかけた。
静かな夜の住宅街に、ギシギシとはしごを上る音だけが響き渡る。
ここを越えれば、第1関門は突破だ。
この日は私たちにとって、年に1度だけの特別な日。
それを邪魔する者は、許さない。
これは巨大組織と私たち3人との全面戦争だ。
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