ビール

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ビール

「翔さんお邪魔します!」  玲也は仕事後、一度自宅に帰って私服に着替えてから翔の部屋へ来ていた。  翔がいつもの薄い笑いで迎えてくれる。 「お前、何買ってきたんだ?」  玲也の手にはビニール袋が握られていて。 「じゃーん!ビール買ってきました!」  それを見て翔が呆れた様に玲也を見つめる。 「お前、飲めないのは散々わかってるだろ?」  そう言われて僕はちょっとだけムッとする。  僕だって大人なんだ!翔さんと晩酌してみたかったんだ! 「翔さん!僕はね、やればできる子なんですよ?今日は朝まで語り明かしましょう!」 「ほーん」  翔が呆れた眼差しを解かないままに気のない返事をする。 「さぁさぁ、翔さん座って座って」  まるで自分の家の様に勝手知ったる翔の部屋のリビングの椅子に翔を座らせる。プシュッと小気味よい音を立ててビールのプルタブが開けられた。 「お前、倒れるなよ?倒れたら襲うからな?」  倒れなくても襲うくせにと僕は内心思うが言葉には出さない。 「翔さん、かんぱーい!」  玲也の缶の中身が半分くらい減って来た頃だろうか。  明らかに顔が真っ赤になっており、おもむろに向かい合って座っていた座席を立ちあがり翔の隣の席に座った。 「玲也?」 「翔さん、キスして?」  その言葉に翔が玲也に口付ける。 「んっ、ぅ」 「大丈夫か?玲也」  玲也の目がトロンとしていて明らかに平常ではない。 「翔さん、頭撫でて?」  翔が要望通り頭を撫でてやる。  玲也は嬉しそうに半開きの目で笑った。 「おい、玲也、寝るか?」 「翔さん、抱いて?お願い」  そう言いながら翔の太ももの上に無理やりよじ登って来る。  そのまま翔の首に抱き着いてぎゅっと抱きしめた。 「任せろ」  パチッと目が覚めた。  頭がガンガンする。  って、え⁉僕なんで全裸⁉  隣を見やると翔も裸でスヤスヤ眠っている。 「翔さん、翔さん」  僕は翔さんをゆさゆさ揺すって起こす。 「ん、玲也起きたのか」  確か僕たちはビールを飲んで男同士の熱い語らいをしていたはずだ。  それなのになんで全裸⁉ 「お前酔っぱらって誘惑してくるから食っといた。気絶するまで求めてくるから大変だったんだぞ」  僕が誘惑⁉ありえない!ありえない!  男同士の熱い語らいは⁉翔さーん!
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