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「岸野くん、やっぱり気づいたんだね」
セックスの後。
ベッドの中で川瀬に色の変化を伝えると、
川瀬は寂しそうに微笑み、そう言った。
「気づいたって、川瀬は知ってたの?
こうなるってこと」
「うん。初めて付き合った人に言われた。
セックスしていたら僕から濃紺の何かが
出て、それで気持ちが冷めたって」
「それは今まで、何人に言われた?」
「セックスしたのは、その彼を含めて2人。
どちらも付き合ってすぐだったし、あまり
ショックはなかったけど、やっぱり僕は
恋愛しちゃいけない体質なのかな」
「そんなことはないと思うけど」
「岸野くんも、気持ち冷めたよね?ピンクや
濃紺の原因は、僕から出たオーラだって
わかって」
「というより、何故セックスの時に濃紺の
オーラが出るのかを知りたいかも」
「え?」
「もしかしてセックスに、何か抵抗がある?
例えば、親のセックスを見てしまったとか」
「何故、わかったの」
「いや、何となく。川瀬、真面目だから、
見てはいけないものを見てしまったって、
ずっと悩んでたんじゃない?」
「うん。誰にも言えなかった」
「そうか。川瀬、おいで」
枕を引き寄せ、そっと川瀬の頬を撫でた。
「岸野くん」
「うまく言えないけど。もう忘れなよ。
僕たちが生きているのは過去じゃない。
未来に繋がる今だよ。僕の気持ちは、
川瀬を愛してることに変わりがない。
またセックスしようよ。色なんて関係ない。
魔法もいらない。一緒に乗り越えよう」
「うん‥‥」
「また泣いてる?ホント、泣き虫だなあ」
片手で傍らにあった箱からティッシュを
1枚取ると、川瀬の頬を伝う涙を拭いた。
「岸野くん、大好き」
「僕も、川瀬が大好きだよ」
しがみついてきた川瀬の背中に腕を回すと、
濃紺一色だった部屋の空気に、
少しずつピンクが混ざってきた。
「川瀬、キスしよう」
そう言って、
川瀬の顎を持ち上げ、唇を僅かに開かせる。
顔を傾け、優しく川瀬の唇に触れた。
「愛してるよ」
途端に、川瀬の頬がピンクに染まった。
それと同時に、部屋を取り巻く空気も
はっきりしたピンクに変わった。
「川瀬。今、ピンクのオーラが出てる」
「うん、岸野くんのおかげで」
「またセックスしてみようか」
「僕もそう思ってた」
そう言って僕たちは微笑み合い、
どちらからともなく顔を近づけたー。
2回目のセックスは、
濃いピンクの空気に包まれて、
無事に終わりを迎えた。
「川瀬、気持ち良かった?」
「うん。ありがとう。サイコーでした」
満面の笑みの川瀬に言われ、僕は満足した。
色なんてどうでもいいと川瀬には言ったが、
きっと僕たちの恋は、
鮮やかなピンク色に染まったままだと思う。
かなり目は疲れそうだが、まあいいか。
一生、一緒にいような。川瀬。
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