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結局それから僕は、
連日入っていたバイトの日程を調整し、
川瀬の部屋に行く日を設定することにした。
そうでなければキスの禁断症状が出て、
大学で川瀬の姿を見る度に押し倒してしまう
かも知れないと思ったからだ。
今のところ、
川瀬に対する衝動はキスだけだったが、
そのうち抱かれたいと思うようになるのか。
「今までにキスした相手が、川瀬に抱かれたく
なったのって、どんなタイミング?」
川瀬に訊いてみたが、何故か川瀬は曖昧に
微笑むばかりで答えてはくれなかった。
初めてのキスから数回は、
唇を合わせるだけのソフトなものだったが、
やがてキスに慣れた僕は、
川瀬と舌を絡め合わせ吸い尽くすような
深いキスを繰り返していた。
キスから始まった僕の恋衝動は、
止まることなく強くなる一方だった。
その日も、僕は川瀬の部屋で
川瀬と抱き合い、深いキスをしていた。
2人の間を
唾液が糸を引くくらいの濃厚なキスの後。
僕は川瀬に訊いてみた。
「川瀬、キスだけで満足?」
「岸野くんは?」
「付き合うってデートするものなのかと
思ってたから、家でキスばかりしてても
いいのかなって」
たまにはごはんでも食べに行く?と川瀬に
訊いてみたら、川瀬は目をうるうるさせ、
大きく頷いた。
「行く」
その途端、部屋を覆う空気のピンク色が
濃くなった。
「あ。わかった、このピンク色。
恋モードが高まるたびに濃くなるんだ」
「岸野くん、見えにくい?大丈夫?」
「うん。川瀬と会ってる時だけだから、
大丈夫だけど。これ以上濃くなったら、
どうなるんだろうとは思う」
「そうだね」
「で、どこで食べる?」
「近くに安くておいしい焼肉屋があるよ」
「いいね、行こうか」
「うん」
川瀬の笑顔に触れ、僕まで笑顔になる。
やっと付き合っている感覚を抱いた。
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