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第7話 家庭教師
翼はキッチンに立ち冷凍庫を開けてレンチンのチャーハンを取り出して自分で温めて食べ始めた。
キラリも一緒に食卓テーブルを囲み翼を目で追っていた。
キラリ「ねぇねぇ翼~、母ちゃんから家庭教師の話とかされなかった?」
翼「あ?家庭教師?何それ?」
キラリ「あっ、別に聞いて無いならいいんだけど…」
翼「だってお前…今さらキラリに家庭教師付けたところでもう遅いだろ?」
キラリ「……………」
翼「え?あ…なんかごめん…だってよぉ~、お前もう高3だろ?後は卒業待つだけ…
え?お前もしかして進級出来たのに卒業危ないの?」
キラリ「別に…多分出来るとは思うけどさ…」
翼「俺が本当にお前の家庭教師やることになってんのか?」
キラリ「そんなのまだわかんないよ…ただ…昨日ちょっとそんな話が出たから…」
翼「マジかよ~…それはダルいな…」
キラリ「はぁ!?私だってお前なんかに家庭教師してもらうぐらいなら死んだ方がマシだ!」
翼「ふーん…あっそ。なら良かった。お前の方からこの話は断っといてくれよ!」
キラリは何も言わずに2階に上がり、自分の部屋のベッドでうつ伏せになっていじけていた。
翼の…
バカ野郎…
その日の夜…薫は晩御飯の支度を終えて食卓テーブルに全て並べてからキラリと翼に声をかける。
薫「キラリ~、翼~ご飯の用意出来たよ~!」
二人はすぐに降りてきてテーブルの前の椅子に座った。
薫「キラリも少しは手伝ってくれれば私も楽なんだけどなぁ…」
すると翼がスッと立ち上がり茶碗にご飯をつけてテーブルの上に置いた。
薫「あら、翼ありがとう!助かるよ。あともう少ししたらパパ帰ってくるみたいだから、そこの大きめの茶碗にもお願いね」
翼「了解!」
薫はキラリにいつもの元気が無いことに気付いた。
薫「キラリ?どした?翼と喧嘩でもしたの?」
キラリ「別に…」
そのとき清が玄関を開けて陽気に声をかけて来た。
清「ママ~、キラリ~、愛するパパが帰ってきたよ~!」
清はすぐにリビングに顔を出して作業着を脱ぎ、ネクタイを外して食卓テーブルに着いた。
すぐに食事が始まり家族団らんの時間が過ぎていく。その間中、キラリは一言も発しないことに清も気付いて
清「キラリ?どうしたんだよ?学校で何かあったのか?」
キラリはブスっとしたまま黙っている。
薫がその空気を変える為に一旦食器を下げてから一瞬この場を離れて、そしてテーブルの上に
〝バン〟
と三万円を押し当てた。
キラリと翼が、急に薫がキレ出したのかと思いビクッと飛び上がった。
薫「翼、これ…今回限りあんたに小遣い上げる!全くお金持って無かったらあんたも切ないでしょ?その代わり、翼はキラリの家庭教師として今日から働いてもらいたい!もちろん家庭教師として毎月あんたに給料を支払う。ただし、キラリの成績が少しも変わらなかった時は、自分でバイトなり何なり探してここの家賃を支払ってもらう!どう?お互いWin-Winの関係だと思わない?」
キラリは心の中で
翼は私の家庭教師なんか面倒くさくてやりたくないんだよ…翼にとって私はウザイだけの女なんだよ…こんなに嫌な想いするぐらいなら、翼のことを家に連れて来なきゃ良かった…
そう思ってたとき、翼から意外な言葉が出てきた。
翼「はい!喜んで家庭教師やらせて頂きます!」
キラリ「は…はぁ!?」
お…お前…昼間はあんなに嫌そうな顔してたくせに…現金見た途端に態度変えんのかよ!
キラリは目を丸くして翼を凝視していた。
薫「キラリ、翼の命運はあんたにかかってんだからね!ちゃんと勉強して無事卒業してよ!」
翼「キラリ、今から俺のことを先生と呼べ!そして、俺の言うことは絶対な!」
キラリ「でも…父ちゃんは良いの?」
薫「これはもうパパと話して決めたことなの」
清「キラリ、俺も昔は卒業が危なくて、ママにたくさん勉強教えてもらってギリギリ卒業出来たんだよ。ま、俺の場合は例え卒業出来なかったとしても就職先は約束されてたんだけどな…」
薫「翼、よろしく頼むよ!」
キラリ「かっ…勝手に決めないで欲しかったな!私にだって選択の余地は…」
薫「ない!」
清「ない!」
二人同時にピシャリと言い放った。
キラリ「し…仕方ないなぁ…」
キラリの心の声…
ヨッシャアァァァァァァ~!
これから毎日翼と甘々ラブラブな密着家庭教師デートが始まるぞぉ~!
キラリ、そんなこともわからないのか?でも、逆にそういうところがかわいいぜ!
だってぇ~…
そうやって甘えてもダメだそ!
つ…翼!?そんなに密着したら…
キラリ…俺…お前のこと…
キャー!なになに?ウソでしょ!?翼!?ダ…ダメだよ…私…まだ高校生だし、そんな…
翼が顔を近づけて来る~~~~~!
キラリ…キラリ…
そんなにキラリ、キラリって…呼ばないでよ…私だってほんとは…
翼「キラリ?お前大丈夫か?さっきからニヤニヤニヤニヤして…」
清「キラリ…お前そんなに勉強好きだったのか?」
薫「パパ…キラリが勉強好きなわけないでしょ!好きなのは…」
キラリ「あぁ~!母ちゃん何?何?何?勉強!?勉強なんて…」
翼「キラリ?お前…」
キラリ「え?何!?」
翼「お前…俺に家庭教師になってもらうぐらいなら死んだ方がマシだったんだっけ?」
キラリ「い…いや…母ちゃんの言うことは絶対だからさぁ…その…仕方ないから教わってやるよ…」
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