流れる雲に君を問う

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「勘違いじゃないか? 俺は問答雲の話なんてしたことないけど」 「~~っ! もういいです!」  この人の心配もお節介も、この場限りの一過性のものなのだ。真面目に受け取ったら馬鹿を見る。これ以上話していたくなかったので、彼を振り切るために呼吸も整えずスタートを切る。  しかし、腹が立つことに、先輩はなんなく追いついてきた。がむしゃらにスピードを上げて引き離そうとした私の腕を、先輩がつかんでひきとめてくる。 「だめだ。足がもつれてるだろ。手も冷たいし、こんな状態じゃケガするだけだ」  有無を言わせぬ強い口調に一瞬ひるむ。それが悔しくて唇を噛んだ。 「……離して下さい。先輩には、関係ない」 「関係ないわけないだろう。陸上部なんだよな? 大会が近いんじゃないのか? だったらなおさら、こんな無茶な練習の仕方は――」 「――大丈夫だってば!」  自分でも思ってもみなかった大声が出た。ハッとして先輩を見やると、彼も驚いたのか、呆気にとられている。  いたたまれなくてきびすを返した。先輩の引き留める声を無視して荷物をまとめ、部活用の鞄に押し込める。 「――雪花っ!」  先輩が私の鞄をつかんだ。私はそれを思いきり振り払う。 「離してっ!」  その際、何かぷちんという音がしたが、私は先輩から逃げることで頭がいっぱいで、そのまま振り向くことなく自転車に飛び乗った。
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