流れる雲に君を問う

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 空が甲高く鳴いている。    セミや鳥のさえずりで賑やかなこの時期、図書室だけは異空間のようだ。友人の李果(りか)のつきあいで中に入った私は、ひんやりとした空気と静寂に迎えられた。  ここ最近の猛暑により、ようやく全室エアコン完備になったというのに、校舎内はどこも暑い。特に、終業式の今日は生徒達がみんなどこか落ち着かなくて、行き場のない熱気が充満している。  それなのに図書室がこんなに涼しさを保っていられるのは、利用する生徒が少ないからに違いない。 「じゃああたし、予約してた本借りてくるから」  李果がカウンターに行くのを見送り、私は室内を見渡した。  本当に閑散としている。夏休みの課題なのか、プリントを手にした生徒が数名、棚の周りをうろうろしているくらいだ。  奥にある横長のベンチには、顔に本をのせて昼寝をしている生徒までいた。外の喧騒から切り離されたかのように静かで涼しい図書室は、とても寝心地がいいだろう。  でも、もし図書委員にばれたら怒られそうではある。健闘を祈る。 「お待たせー。部活で読書感想画描くことになっちゃってさー。夏休み中に活動あるってめんどくさいよねえ」  何冊も本を抱えた李果が戻ってきた。 「雪花(せつか)のとこも、さっそく明日から部活あるんでしょ?」 「うん。大会が近いからね」 「よくやるよねえ、こんな暑い時に外で運動なんて。考えるだけできついわー」  私は李果にほほえみを返し、窓からグラウンドを見下ろした。    みんなはそう言うけれど、私は外で走るのが好きだ。  自分の手足をめいっぱい動かして、全身で自由を味わえるから。
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