流れる雲に君を問う

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 にわか雨だったのか、屋根の下で雨宿りしていると、まもなく雨が上がった。濡れた髪や服をどうするかという話になり、先輩の提案で学校へ向かうことになった。  学校に着くと、先輩と別れて女子陸上部の部室に入った。  午前中に来たばかりだというのに、ここからもまた違和感がぬぐえない。なんともいえない気持ち悪さを感じながら、自分のロッカーを開けて、腑に落ちた。  見覚えのない私物。たたみ方の違うユニフォームやなじみのないにおい。  心臓がぎゅっとしめつけられた。これは私のロッカーじゃない。いや、ロッカーどころか、私のものはどこにもないのかもしれない。 (本当に、何が起こったっていうの……)  仕方なく、友達のロッカーからドライヤーを借りる。陸上部はロッカーに名前を書かないから、位置的には彼女のものだというだけだが。  彼女たちは大丈夫なのだろうか。異変が起こっているのは、私だけではないのだろうか。  髪を乾かしながら、心細さに気分がどんどん沈んでいく。唯一の救いは、先輩が一緒だということだ。  その先輩は、一足先に廊下で待っていてくれた。体育館裏にあるベンチに案内され、そこに並んで腰掛ける。先輩が言うには、体育館の屋根のおかげであまり雨はかからないし、警備員からも、見回りの先生からも死角になるらしい。 「俺も、全部わかってるわけじゃないんだけどさ」  先輩はそう切り出すと、一度、考えるように口元に手をやった。 「先に一つだけ確認させて。君が、俺と会うのは何回目?」  なぜそんなことを聞くのかわからなかったが、真剣な表情をしていたので大人しく答えた。 「四回目、です」 「そう」  先輩は、特に驚いた様子もなく頷いて、言った。 「俺は、君と会うのは二回目だ」 「え……」  思わず眉間にしわを寄せた。知らないふりではなかったのか。やっぱり忘れただけなのか。しかし、先輩は私の心を読んだかのように、こう続けた。 「言っとくけど、忘れたわけじゃないよ。俺、記憶力はいいからさ」  じゃあ後の二回は何だったと言うのか。 「だからといって、君が勘違いしてると思ってるわけじゃない。君は確かに会ったんだろう。この世界の俺じゃない俺に」 「え……?」 (俺じゃない、俺?)  何を言っているのか判らない。先輩は、「順を追って話すよ」と前置きをして、続けた。 「って言っても、俺だってわかんないんだ。これはただの憶測。荒唐無稽な話になるけど……、パラレルワールドなんじゃないかと思うんだ」
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