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(え? 本? こんな炎天下で? っていうか、ついさっきまで誰もいなかったのに)
気になったが、問題はそこではない。独り言を聞かれてしまった恥ずかしさをごまかすため、慌てて取り繕う。
「あの、えーと、今のは……」
「なんで、こんなところにいるんだ? それに、その格好……」
「……え?」
まさか、知り合いか。内心冷や汗をかき、相手の顔をまじまじと見つめた。
すらりとした長身のイケメン。休み時間にはクラスメイトとバスケでもしていそうな雰囲気だが、うちのクラスの男子達より佇まいに余裕がある。もしかしたら三年生かもしれない。
……うん。やっぱり知らない人だ。
「別に、公園の使用許可はいらなかったと思いますけど」
質問の意図がわからなかったので、あたりさわりのない返答をしてみる。すると、彼は目頭を押さえて目をつむった。
「もしかして、幻かな?」
「……は?」
幻って、私のことか。
ぽかんとしている私を尻目に、彼はスマホを操作し始めた。
いつ会話が終わったのだろう。しばらく待ちぼうけを食らわされ、私は結論を下した。
この人、顔はいいけれど、ちょっと変な人だ。
放っといて、練習に戻ろう。
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