正体不明の感情

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正体不明の感情

心配性ではあるが男勝りな性格の私は、かっこいい雰囲気の乗り物の、アンディジョーン・アドベンチャーが好きだ。この周辺のレストランや施設も昔の中央アメリカの雰囲気で、この気軽な感じがたまらない。 入口をくぐって、有名なキャラクターがお出迎えする賑やかさに思わず心が踊ってしまう私は、手を繋いではしゃぐ姉にお願いする。 「ねー、おねーちゃん!私、アンディジョーン・アドベンチャーに乗りたい!」 「だーめー!マリエル観てから!それ以外はオマケでーす」 「えー! じゃ、先にアンディの予約券とりに行く!それからでもいいでしょ?」 「あ、それいいね、そうしよっか!全然考えてなかった!あはは~」 (完璧に連れてくとか言ってなかったっけ…? ふわふわした姉を持つと大変だ…) 年齢に似合わず、否応なしにしっかり者にならざるを得ない私は、やれやれ…と年寄りのように肩をすくめた。 入口すぐにある、パーク内のエリアを移動できるトランジットスチーマーシップの乗り場へ行く。これに搭乗すれば、アンディジョーン・アドベンチャーがあるラストリバースクエアエリアへ行けるのだ。 少し緊張しながら、姉と並んでチョコンと席に座り、ゆっくりと流れていく風景を眺める。 外国の港町の風景から、ゆっくりと姿を現す壮大な火山に圧倒される。それが遠くなっていくと、今度は海を模したポップな色彩が現れ始める。 姉のお目当てはここ、マーメイドディーパーエリアである。その証拠に、目をキラキラとさせて、その風景を食い入るように眺めていた。 更に通り過ぎると、どんどんと密林の怪しい雰囲気へと変わる。ここが終点であり、私が一番好きなラストリバースクエアエリアだ。 この風景の流れをみていると、いつもは感じない、正体不明の感情が湧き上がってきた。 (なんだろう…?) 船着場に降り立つと、自然と小走りになり、まだ人がまばらなアンディジョーン・アドベンチャーの予約券発行機の前に着く。 マーメイドコンサートの上演が終わる頃の時間帯の予約券を無事に取る事ができた私たちは、そのまま隣のエリアであるマーメイドディーパーへと歩いて行った。 歩を進める度に、エキゾチックな渓谷や森の中の雰囲気から一転、可愛らしい海のデザインになっていく。 その変化を眺めながら、私はまた、言い表せない感情に包まれていた。 (なんだろうこの感じ? ワクワクするような、ザワザワするような…) 不思議な感覚に包まれながら、早くマリエルに会いたくて急か急かと早歩きする姉に遅れまいと、必死に歩く。 少し息をあがらせながら、マーメイドコンサートが上演されるシアターへと到着した。
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