フワフワした熱と疑問

1/1
前へ
/11ページ
次へ

フワフワした熱と疑問

上演が終わり、シアターを出て「マリエルかわいかったー!」と言いながらスキップしている姉の背中を眺めながら、頭がどんどんとボーッとしていった。 そのまま再びラストリバースクエアエリアへと歩いて戻り、アンディジョーン・アドベンチャーの搭乗口へ行くと、予約券をみせ、優先通路を通ってライダーへと搭乗した。 怪しい洞窟の内部を通り、色々な仕掛けを五感で迎え入れる。怪しい音楽、吹き出す風、急落下するライダー。 不思議な事に、これには、言い表せない感情は湧くことがない。 ライダーを降りて出口から明るい外へ出て、スリリングな爽快感を反芻するが、シアターで感じた感情に、頭ののぼせは取れないままだった。 「アンディ楽しくてやばかったー!次どこ行く?なんか食べよっか?少しおなかすいたー!」 「…え?あ、うん、そうだね」 「あんた、さっきからボーっとして、どうしたの?」 フワフワとした鈍感な姉にも気づかれるほど、様子が違っていたらしいと思い焦る。そして、ボーッとしている理由なんて、自分でも解っていない。 「なんか、人魚がね、忘れられないの」 「人魚?マリエルね!すごくステキだったもんねー!」 『なんかちがう…なんかね?なんか…』 「なになに?どしたの?」 『人魚になりたいの…かなぁ?』 「は?」 『うーん…?』 「マリエルになりたいの?」 『ええっと…?わかんない、それともなんか、ちがうなぁ…?』 「どういうことー?」 『うーーーん…?』 短い腕を大袈裟に腕組みし、私は必死に考えた。 (なにが、したいんだろ?) 「まあ、なんか分かんないけど、何か食べようか? ポップコーン買おう! チュロスもいいねー!」 「あ!うん!食べよ食べよー!」 姉に明るく答えるが、いくら考えても解らない疑問が薄い布のように、私の幼い心を包みこんでいった。 キャラの耳付きカチューシャを買って着け、ポップコーンのバケツを抱えて、姉と笑いながら、様々なアトラクションを回る。 それでも、答えの出ない疑問と言い表せない感情は、頭のどこかに残ったままで。 一つだけ分かることがあるとすれば。それがヒントになるとするならば。 (あのキラキラした人魚を、なんとかしていつも見ていたい…!) それだけだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加