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フワフワした熱と疑問
上演が終わり、シアターを出て「マリエルかわいかったー!」と言いながらスキップしている姉の背中を眺めながら、頭がどんどんとボーッとしていった。
そのまま再びラストリバースクエアエリアへと歩いて戻り、アンディジョーン・アドベンチャーの搭乗口へ行くと、予約券をみせ、優先通路を通ってライダーへと搭乗した。
怪しい洞窟の内部を通り、色々な仕掛けを五感で迎え入れる。怪しい音楽、吹き出す風、急落下するライダー。
不思議な事に、これには、言い表せない感情は湧くことがない。
ライダーを降りて出口から明るい外へ出て、スリリングな爽快感を反芻するが、シアターで感じた感情に、頭ののぼせは取れないままだった。
「アンディ楽しくてやばかったー!次どこ行く?なんか食べよっか?少しおなかすいたー!」
「…え?あ、うん、そうだね」
「あんた、さっきからボーっとして、どうしたの?」
フワフワとした鈍感な姉にも気づかれるほど、様子が違っていたらしいと思い焦る。そして、ボーッとしている理由なんて、自分でも解っていない。
「なんか、人魚がね、忘れられないの」
「人魚?マリエルね!すごくステキだったもんねー!」
『なんかちがう…なんかね?なんか…』
「なになに?どしたの?」
『人魚になりたいの…かなぁ?』
「は?」
『うーん…?』
「マリエルになりたいの?」
『ええっと…?わかんない、それともなんか、ちがうなぁ…?』
「どういうことー?」
『うーーーん…?』
短い腕を大袈裟に腕組みし、私は必死に考えた。
(なにが、したいんだろ?)
「まあ、なんか分かんないけど、何か食べようか? ポップコーン買おう! チュロスもいいねー!」
「あ!うん!食べよ食べよー!」
姉に明るく答えるが、いくら考えても解らない疑問が薄い布のように、私の幼い心を包みこんでいった。
キャラの耳付きカチューシャを買って着け、ポップコーンのバケツを抱えて、姉と笑いながら、様々なアトラクションを回る。
それでも、答えの出ない疑問と言い表せない感情は、頭のどこかに残ったままで。
一つだけ分かることがあるとすれば。それがヒントになるとするならば。
(あのキラキラした人魚を、なんとかしていつも見ていたい…!)
それだけだった。
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