書けない進路表

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書けない進路表

現在、高校2年生。 授業が終わり、クラスメート達がお喋りでザワザワとしている中で、私は自分の席に座って頬杖をついて外を眺めている。 今朝のHRで配られた、目の前に広げている進路希望調査表に、なんと書けばいいか迷っていた。 「っつーか、またまだ高校生なんだけど? 可能性多すぎじゃん? 決めんの早すぎだし。 一生を今、決めんの? マジで早いって」 周りに聞こえない程度の小さい独り言さえも口が悪くなる程度には、現実的に、立派に成長した。自分でそう思ってしまった。 しかし、幼い時に感じたあの言い表せない感情は、今でも胸をザワつかせている。 小さい時にディスティニーシーで感じた、あの言い表せない感情。あれを現実に、具体性をもって勉強したり、仕事にしたりしたい事だけは解る。 “将来、人魚になりたいです” そんな事が頭を過ぎり、すぐに自分で自分を笑ってしまう。頬杖をついていた両手を上げながら背伸びしながら上を向き、また小さく独り言を呟く。 「そんな馬鹿な事、書けるわけないっつーの」 伸び終わると、皆がガタガタと掃除用具入れから箒わを取り出す音が聞こえ、掃除が始まる気配を感じる。 どっこいせ、と、高校生に似合わない掛け声で立ち上がり、掃除用具入れの扉側に掛けられている雑巾を手に取ると、自分が割り当てられている棚拭きにとりかかる。 「あーどうしよう、マジでどうしよう」 黒板を水拭きしながら、また独り言を漏らす。友達が「どうしたんよ?」と声をかけてくるのに対して「あー、進路表がさぁ」と、適当に返事をした。 雑巾がけを終わらせると、自分の机に置きっぱなしにしておいた進路希望調査表を、自分の鞄に仕舞い込む。 帰宅部である私は、そのまま鞄を持つと、さっさと教室を出て、学校の自転車置き場へと向かった。 「いっくら考えても、解らないものは解らないんだよね…」 歩きながら、またはぶつぶつと独り言が出てしまう。
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