a terminal(終着駅)

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◇◇◇  その日の夕方、ぼくは友美に会うために花岡駅にいた。晩秋の日暮れは早く、郊外は深い闇に包まれていたが、駅の周辺だけは街の灯に照らされてめっぽう明るかった。  駅前のスクランブル交差点を渡り、駅の向かい側にあるビルのエレベーターで五階に上がる。  五階はグルメフロアになっていて、多くの人で賑わっていた。辺りに甘い匂いや香ばしい香りが漂っている。  ぼくがレストラン『クレモナ』に到着したとき、すでに友美はレストランの入り口の横に立っていた。友美はボトルグリーンのコートを身に着け、首には緋色のスカーフを巻いている。 「ごめん。遅れちゃった」 ぼくがそう言って頭を下げると、友美は、「大丈夫。私も今来たばかり」と言って笑った。友美が笑うと、細面の口元に小さなえくぼができる。それがショートヘアとよく似合っていて、キュートだといつも思う。 「そのコート、よく似合っているよ。素敵だ」 「あなたのスーツ姿も素敵よ。あなたって紺色が良く似合うのね」 「ありがとう」  レストラン『クレモナ』に入ると、店のウェイターが気を利かせたのか、ぼくたちを窓際のテーブルに案内してくれた。  窓の外には街の電飾が絨毯(じゅうたん)のように広がっている。店内は広いオープンフロアになっていて、数多くのテーブルが並べられていた。食事は全てバイキング形式で食べ放題、飲み放題だ。  ぼくと友美は、上着を脱ぐと向かい合わせで椅子に座った。  友美は、コートの下に白のニットを着ていた。彼女のスリムな体にそのシンプルなデザインの服は良く似合っていると思った。
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