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雑踏の一番奥、下りのホームに並んでいる客の列の先頭に祖父母と孫だと思われる三人連れがいた。孫は小学生くらいの男の子で、コバルトブルーのトレーナーを身に着け、黄色いスクールバッグを背負っている。
祖父母と孫は楽しく会話をしているようだが、その声は駅の雑踏にかき消されて聞こえてこない。祖父母の身なりは小ぎれいで、人柄の良さが感じ取られた。
……二番線に下り列車、香泉山行が到着します。黄色い線までお下がりください……
アナウンスを聞いたからだろうか、列に並んでいる群衆が皆一歩後ろに下がった。
暗い線路に淡いオレンジの光が流れ込む。列車の警笛が響いた。
そのときぼくは、不思議な人影を見つけた。紺色のスーツに大きめの黒いビジネスバッグ。もしかしたらあれは……。
……いや、そんなはずはない……と思いながら、もう一度目を凝らす。
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