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晩秋の風は冷たい。上弦月の白んだ地平から細長い雲の尾が伸びている。
帆垂駅は閑散としていた。向かい側のホームでは一組の若いカップルがベンチに座って話し込んでいた。
ホームの時計は午後十時を指している。駅の周囲は闇に包まれている。
向かい側のホームの男性が、手を女性の膝に乗せるのが見えたので、ぼくは視線を背け夜空を見上げた。満天の星空。空気は澄んでいる。
……花岡駅での人身事故の影響で、列車の到着が遅れております・・・・・
ふいに流れたアナウンスに、ぼくは僅かに困惑し、視線を足元に落とす。アスファルトの路面に煙草の吸殻が張り付いていた。
改めて向かい側のホームを見るが、カップルの姿はもうない。
…………
ぼくは、黒い大きめのビジネスバッグを下ろすと、ホームのベンチに腰を下ろし、数時間前のことを思い出した。
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