a terminal(終着駅)

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 ぼくたちは、店の看板メニューである手羽唐と牛しゃぶをたらふく食べ、存分に語り合った。そしてふと会話が途切れたとき、ぼくは姿勢を正して言った。 「今の会社とは別に、コアワーキングスペースで立ち上げた事業が軌道に乗り始めてる。お得意さんも増えた。年内には仲間と数人で新しい会社を立ち上げる予定なんだ。来年には、友美さんと幸せに暮らせるようになると思う」 「何だか、回りくどいプロポーズね」、そういって友美は微笑んだ。 「ごめん。じゃあはっきり言うよ……」 「はっきり言わなくていいの。あなたの気持ちは十分に分かってる。答えはYESよ……」 ………… 『へぇ。やっぱりそこなんですね』  ふいに甲高い声が聞こえたので、ぼくは駅の冷たいベンチの上で目を開けた。  見ると、黒い服を着た子どもがベンチの前に立っている。目深に黒い帽子をかぶっているので、性別は分からない。声色も中性的だ。頭のてっぺんから爪先まで全て真っ黒な風体なので、異様に浮き立って見えた。 「君、……誰?」 『あたしは、案内人(ガイド)よ』 「案内人(ガイド)?」 『この辺は道に迷いやすいの』  ここは会社からの帰路。道に迷うはずがない。乗り換え方はもちろん、駅周辺の路地やひっそりとした隠れ家カフェだって知っている。 「こんなところで道に迷うわけないだろ」 『いいから、ここにサインをしてくれない?』 クロい子はそう言って、紙とペンを差し出した。
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