3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
Bar
さて、夜も更けてきた頃にバーの扉が開いた。
赤ちゃんたちが驚かないようドアベルの音は優しく小さい。
最初こそは警戒する方も多くいたが、ディナーでお世話になっている方々の口コミのおかげですぐに店は繁盛していった。
赤ちゃんやお母さんが一息つける場を、と思い作った店。
それはいいのだが、その思いが強すぎたのか、私がおかしくなってしまったのか。
赤ちゃんの声は「ばぶばぶ」「キャー!」という声で聞こえなくなってしまった。
私には大人と一緒の話し方で聞こえてくるだ。
「パパ、今日も粉ミルクをロックで」
「私はリンゴジュースを水割りで(3:7)」
それぞれの赤子の母たちは、子どもの欲しがる飲み物の的確さに驚きを隠せないでいた。
「どうぞ。粉ミルクロックです」
「と、リンゴジュース水割り。です」
母たちはひどく驚いた。
自分たちですら時として的確に把握していないことを、他人の、外の(外野)パパにわかるだなんて、と。
私にも分からないが、聞こえてくるのだ。
大人と同じ言語を話しているこの子たちを。
「パパ〜。少し抱っこして。」
「お腹へったから食べさせて。」
「もぅ眠いからお母さんに帰るよう言っといて。」
瞬く間にいないいないBarは大盛況となり、テレビやインターネットにも引っ張りだことなった。
最初のコメントを投稿しよう!