祟るは身を隠せ、と。

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「私はこの家に来たことに後悔はありません。事件のことは本当に許されることではありませんが、背負うことを苦に思ったこともありません。両親から実の両親の話を聞いて、太輔様のことを思うと余計に……。だからこそ、私は太輔様の味方でありたいのです。美砂子様が太輔様を思うのと同じように、私も美砂子様のお傍にいる限りは──いえ、この家に居る限りは皆様の幸せを願うだけです」  誰も苦しまない世があれば、どれほど楽なのだろうかと晴乃は気付いて少し視線を逸らした。その時、温かい手が晴乃の頬を触り、美砂子へ向けられる。 「貴女もよ、晴乃さん。皆の幸せを願うだけではなく、生きることを選ばせてくれた実のお母さんに幸せだと報告しましょう」 「……はい」  笑顔で頷いた時には、美砂子にも零れるような笑顔が晴乃に向けられていた。 「では、太輔の見舞いの約束……お願いしますね」 「承知致しました」  こうして日々は過ぎていく。美砂子の部屋を出た晴乃は、運命に抗えない陽に視線を細めて廊下を足早に進んだのだった。
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