記憶デバイス  理想的な家族12ー凪

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 母はそれからすぐに、家族の他の誰にも会うことなく、姿を消した。だから凪も、家族の誰にも母が帰ってきたことを言っていない。  京次郎には記憶デバイスは郵送で送られてきたと言った。  母からの伝言を「知らない方がいい」ということまで含めて、叔父に伝えた。  叔父は神妙な顔で「分かった」と頷き、「セキュリティ対策は強化しないとな」とボスらしい顔で言った。 「それにしても、良子さんって何者?」  当然の質問に、凪はしれっと答えた。 「俺の母さん。だから秘密は守ってね、怖いから」  誰にも言うなと、暗に脅しをかける。 「あ、今の顔、良子さんにそっくり」  京次郎がぞっとしたように、自分の腕を抱いた。 「あ、そういえば、母さんが言ってたよ。京次郎くん、しっかりしなよって」 「え?ほんと?」  いや、嘘。  京次郎がソワソワしているのを横目に、凪は記憶デバイスを手に取ると、コントロール室に向かった。  デバイスの中身は消去されてしまっただろうか。されたとしても、痕跡くらい残っているかもしれない。  自分の目で確かめておかないとな。  母に頼るのは、極力御免被りたい。 
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