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Le Voleur de Grimoire 〜魔導書の盗賊〜
聖暦1580年代末。フランクル王国・王都パリーシィス……。
世に〝華の王都〟とも称される、このエウロパ世界随一の文化の花開いた大都市で、近年、ある一人の男のことが話題となっていた……。
その男の名は〝アルベール・ド・ラパン〟。高級美術品ばかりを狙う大盗賊だ。
神出鬼没の謎多き人物で、顔も年齢も国籍も不明。若々しい紳士だという話もあれば、よぼよぼの老人だというウワサもある。唯一わかっているのはその名前だけだ。
いや、その名前からして本名ではないだろう。〝アルベール〟は彼が魔導書…とりわけ『小アルベール(正式名称『小アルベールの自然的カバラ的魔術の驚くべき秘儀』)の魔術を使うことから、そう渾名されるようになったというのが定説だ。
ここフランクルをはじめ、プロフェシア教(預言教)を国教とするエウロパの国々では、悪魔を召喚してその力を駆使するこの〝魔導書〟を禁書とし、原則的にその所持・使用は厳しく禁じられている。
使えるのは魔法修士と呼ばれる専門の修道士の他、教会や各国王権から許可を与えられたごくごく限られた者達だけである。
ま、とはいえ世の中には表と裏があり、裏の市場では公然と魔導書の写本が売買され、それを使うモグリの魔術師もチラホラいたりするのであるが……。
件のアルベール・ド・ラパンも、そんな非合法に魔導書の魔術を使い、しかも、それを盗みに利用しているという大悪党の怪盗魔術師なのである。
ああ、ちなみに姓の〝ラパン(フランクル語で「ウサギ」の意)〟というのは、彼がシンボルにウサギの紋章を使っているからだとも、いや、それは後付けで、そもそもは脱兎の如く逃げ足が速いことからそう名付けられたのだとか、ウサギのように性欲旺盛なプレイボーイだからだとか諸説いろいろいわれている。
ともかくも、そんな魔術師の怪盗が、またも一つの大事件を起こそうとしていた──。
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