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「なに!? 見張りの者達はどうした!? 賊の侵入に気付かなかったのか!?」
「そ、それが、誰も何も見てはおらず……ほんとに、気づいたら何もかもがなくなっていたのです!」
驚きに目を大きく見開いてゼニアールは尋ねるが、部下自身もその状況が信じられずにいる様子だ。
「そんなバカな! こっちにはなんの動きも……とりあえずわしも行く! ジュディ、まだロッシーニの監視は怠るなよ!」
ともかくも、ゼニアールはこの場をジュディに任せ、自分も
一目散でアラキ城へと向かった。
「──こ、これは……何がどうなっている……」
一本しかない石橋を渡り、ゼニアールが城の中へ入ると、確かに先程の報告の通り、城内にあったお宝の類はすっかりその姿を消してしまっている。
その代わりと言ってはなんだが、大きな絵画の掛かっていた壁には……。
親愛なるナジャンド・カオリン男爵さま。
お約束の通り、あなたの不安のタネであった財宝の数々をいただいてまいります。
これで心置きなく、安心してぐっすりお眠りになることができるでしょう。
まあ、昨夜もよくお眠りだったようですがね。
それでは、ごきげんよう。
貴方の心の友アルベール・ド・ラパンより
という書き置きが、ウサギの紋章入りの便箋に書かれて壁にナイフで貼り付けられている。
「皆、何をやっていたのだ!? ほんとに誰も何も見ていないのか!? 何か気になることは!?」
「は、はあ……男爵の家人や使用人も含め、ほんとに誰も何も……強いていえば、昨夜はなんだか頭がぼうっとしていたような気が……」
えらく殺風景になった城内の様子に、しばし唖然と立ち尽くした後にゼニアールは激昂して尋ねるが、部下達はいずれもそう答えるばかりである。
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