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「ナジャン男爵、あんたは何か気がつかんかったのかね!?」
「いや……わしは一晩中起きていようと、自室でコーヒーを飲みながら椅子に座っていたんじゃが……ちょっとうとうとしたかと思うと……次に気づいた時は朝じゃった……」
ゼニアールはナジャンにも質問してみるが、彼はコレクシオンを失ったショックに虚空を見つめたまま、心ここに在らずといった様子で呆然とそう呟いている。
「ヤツは……アルベール・ド・ラパンはいったいどうやって……なにを突っ立ってる! 調べろ! 徹底的に城の中を調べるんだ!」
ナジャンばかりでなく、呆然自失としてただただ不思議がる衛兵達の尻を叩き、ゼニアールは城内を隈なく調べて廻る。
いや、賊を見ていないことは置いておくとしても、あれだけ大量の宝の山をいったいどうやって持ち出したというのだろうか?
出入り口のドアや窓にはすべて鍵がかかっていたし、特に抜け穴や秘密の通路などというようなものも見当たらなかった。
もちろん、橋を固めていた衛兵達も猫の子一匹通していないという……。
「そ、そうだ! ロッシーニは!?」
城ではなんの手がかりも掴めなかったゼニアールは、最も疑わしい人物──ロッシーニのことを思い出すと、急いで彼の家へととって返す。
「ロッシーニさん! いらっしゃいますか! ロッシーニさん! ……返事がない。よし! 乗り込むぞ!」
そして、ドアを激しくノックするが反応のないことに、ゼニアールはドアを蹴破ると強引に中へと侵入した。
「こ、これは……」
すると、ずっと見張っていたはずなのになぜか屋内はもぬけの殻で、加えて、リビングのテーブルの上に置かれていたものに、またしてもゼニアール達は唖然とさせられてしまう。
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