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修二が話す話の一つ目は必ずこれだった。
「他人のものを取るんじゃないよ。欲しいものがあったら、お父さんかお母さんに言うんだ。すぐには買ってあげられないかも知れないけど必ず買ってあげるから」
尚も続く
「他人のものを取ることを泥棒って言うんだ。一回、泥棒したら、次に何か無くなったとき、お前たちが取っていなくてもお前たちのせいになるんだよ。だから絶対に他人のものは取ったりしちゃダメだよ」
二つ目は挨拶をすること。
「親しき仲にも礼儀あり」が修二の口癖であったほどうるさかった。
周りの人はもちろん、家族間でも必ず挨拶は交わしていた。
葵は大人しい性格だったので、道で近所のおばさんに会ったら「こんにちは」と言わなければならないのが恥ずかしくて帰るまで誰にも会わないようにと願うような子どもだった。
そして三つ目。
「思いやりをもつこと。自分がしてもらって嬉しかったことは他の人にもしてあげる。嫌だったことはしない。困っている人がいたら出来る範囲で助けてあげるんだよ」と言われていた。
修二は、両親を幼い時に亡くしていたので、辛い事が多くあったことも子どもたちに話していた。
そのため優しさに飢えた子ども時代を過ごしたこともしつけには大きく影響したのだろう。
特にこの三つはいつも言い聞かされていた。
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