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月日は流れ葵が出産で実家に帰っていた時。
生まれた赤ちゃんを何人もの人たちがお祝いに来てくださった。
その中に修二の古くからの友人ご夫妻がみえた時のことだ。
奥様が「私ね、今だから言うけど、修二さんのところのお子さんたち、グレちゃうんじゃないかと思って心配してたんですよ。だって、厳しかったから……よくみんなまじめに育ったなと感心してるんですよ」
それに対して修二が言ったことは「三つ子の魂百までって言うじゃないですか。小さいうちに良し悪しを教えておけばあとは何も教えなくても大丈夫ですよ。そして親が一生懸命に働く姿を見せていればグレるなんてことはないんです」
小さかった頃のことを色々思い出しながら、葵は黙って聞いていた。
子どもながらに我慢したことも、今となっては忍耐力が備わったのもそのおかげなのかも知れないなと思った。
それから月日は更に過ぎて葵が今、我が子にそれができているかと聞かれたら時代も違うし、ハイとは言えないだろう。
けれど、少なくともそれをブレずにやり切った父親には、頭が下がる思いがある。
だから時代が変わっても変わらない人の誠を大切に伝えていこうと思っている。
葵は時々思う。
我が子をしつけているとき、父親が「あれ、俺が教えたやつだ!お前もちゃんとやってるな」と言ってるんじゃないか、と。
そんな風に感じた時、少しだけ唇がフワッと緩むのだ。
きっと父親は高い所から笑って見ていてくれているに違いない。
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