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11月23日
色違いの箸と、今夜のおかず。汁物は出す前に温めたいから、お椀は逆さ。同じ理由で、色違いのお茶碗も伏せて置いた。
夫婦箸と、夫婦茶碗。
思わず口元を覆った、新婚生活7日目の夕飯前。
いっぱい食べる、きみが好き
夫婦箸の長い方と、今夜のおかず。汁物は出す前に温めたいから、お椀は逆さ。同じ理由で、どんぶりも逆さ。
向かいの席に座って、肘をつく。
折り合いって大事よね、なんて頷いてみる。新婚生活1ヶ月の夕飯前。
鍵の開く音に立ち上がる。
「ただいま」
「おかえりなさい」
コンマ数秒の間は、寝てなくていいのか?、だ。時計は11時を回ろうとしている。
「明日休みだから」
「そっか」
「お風呂、お湯足して入って」
「ん」
逞しい背中の仕事は、休みが不規則だ。平日出勤の私と休みが被ることは、ほとんどない。
おかずはレンジに、鍋の味噌汁はコンロに、ご飯は炊飯器で保温中だ。
湯上がりでほかほかの彼に、ほかほかの夕飯を出す。
「いただきます」
「どうぞ」
箸ってこんなに掴めるのねと感動してしまう、一口の大きさと食いっぷり。
これを眺めるのが、週末の楽しみ。
「気持ち悪いなあ。そんなに見られると、食べづらいんだけど」
「そう?私は気持ちいいけど」
おかわりの度に立ち上がるのが億劫になって、憧れの夫婦茶碗は諦めた。どんぶりにしておかわりも半分になったので、思う存分食いっぷりを拝めるわけだ。
「今日も美味しかったんだなって、自信がつく」
「あっそ」
共働きだから、賢く作り置きもしてみたい。でもこの人だと、作り置きにならないかもしれない。
そう思うと、ちょっとおかしい。
「別にいいけど、ニヤニヤはすんなよ」
「しないよ」
「してるよ」
今左手にあるどんぶりの決め手が、茶碗と色が似ていたからだなんて、この人はきっと気付いていない。
お茶碗の日
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